WALKER'S 東北復幸のいま 歩くことで伝えられるコト

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2021年5月28日

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【第1回】浜の台所くぁせっと 〜松川浦、観光復活へのチャレンジ

〜雨でもにぎやか「浜の駅」〜


2020年10月25日、オープンの様子(相馬市観光協会HPより)
激しい雨の日でも買い物客でにぎわっていた

取材の当日はあいにくの雨。
相馬駅構内から外を見ると、雨が激しく路面を叩きつけている。
タクシーに乗り込み、ぐんぐんと商店街、住宅街を離れ、10分ほど。
左手に海が見えて、津波の惨事を祈念する伝承鎮魂記念館を通り過ぎると、やがて「浜の駅」と呼ばれる観光市場に到着した。
来てみて驚いた。この雨の中、車に乗って続々と人がやってくるではないか!

この場所の正式名称は、相馬復興市民市場【浜の駅松川浦】。
昨年(2020年)の10月25日にオープンしたばかりだ。
(浜の駅 松川浦 ホームページ)

新鮮で安い!
深海魚どんこは、陸揚げすると浮き袋が出てくる
アオサの味噌汁が食べたい!
モンスターのような顔つき、煮付けにすると絶品
スーパーフードと聞いて買わずにはいられない
地酒がずらりと並ぶ
麦つきせんべいをお土産に
ものすごく気になって買った、濃厚で美味い!

明るい店内に入ると、ピカピカの什器の中に並ぶ、活きの良い魚、不思議な深海魚・美味そうな水産加工品、地元特有の食材、米、麦、野菜、くだもの、和菓子、洋菓子、酒、牛乳、その他食べ物、飲み物の数々…。
一人前の胃袋では足りないほどの食欲が一挙に出てきた。
ホームページには、「相馬市内でも、岡(市街地)と浜では食文化が異なる」と書いてあったが、なるほど、ここに来ればそれが理解できる。
スーパーマーケットにはない楽しさは、こういう地元特有の食文化体験だ。
「いつもこんなにお客さんがいらっしゃるんですか?」と、店員さんに尋ねる。「いやぁ、今日はあいにくの雨で。土日はいつも、もっとにぎやかですよ。」
見慣れない食品を見て回り、お店の人との会話を楽しんでいたら、あっという間に時間が経っていた。

かにめしとカレイ、アオサの味噌汁、まさに浜のメシ

「浜の台所くぁせっと」は、浜の駅施設内にある唯一の食事処だ。
お客さんが列を作って並んでいる。大盛況だ。
係の女性が、にこやかに、てきぱきと対応していて、気持ち良い。
どれもこれも新鮮な魚のメニューで、かなり迷う。
「日替わり定食」の食券を買って、指定された席で待っていると、番号を呼ばれた。
厨房からは、期待通り、美味そうな料理に変身した松川浦の採れたての魚たちが登場した。
「絶品!」
完食して料理の余韻に浸っていると、インタビュー相手の代表、管野貴拓(かんのたかひろ)さんが現れた。
「いやぁ、こんな雨んなって、大変でしたねぇ」
気さくで親しみのわく笑顔に、一瞬で距離が縮まった。

〜管野貴拓さん、「浜の台所くぁせっと」代表〜


浜の台所くぁせっと代表 管野貴拓さん

管野貴拓さん、昭和51年生まれの45歳。
浜の台所くぁせっとの代表であり、またお父様が社長をされている松川浦の「ホテルみなとや」では、営業・事務を任されている。
オープンしたばかりのこのお店に賭ける思い、そして松川浦の未来について、お話を伺った。

〜ザ・おさかな天国、松川浦〜


松川浦のカニ、日本海側よりも断然安い

「もともと松川浦は、新鮮で美味しい魚介類をたらふく、しかも安く食べられることで有名でした。昔は『浜焼き』と言って、様々な魚介類を串に刺して、道路の脇で炭火で焼きながら売っていて、それがこの土地の風景でした。あの震災、そして原発事故が起こって、『空間線量』が問題になってからは、浜焼きの風景は消えました。水産業は、今はまだ試験操業の段階で、漁にも制限がありますが、それでも少しずつ漁ができる状況にはなってきています。」

なるほど。さっき見た「浜の駅」にずらりと並んだ新鮮な魚たちは、最盛期に比べるとほんの少し。魚はいるけれど自由に獲れないということか。
見方を変えれば、大きな潜在力を抱えていると言えるだろう。

では、観光、特に旅館やホテルなど、宿泊業界の方はどうだろう。

「宿泊業界も昔は盛況でしたよ。松川浦はズワイガニ漁でも有名で、値段は日本海側の半値以下で食べられるんです。カニを食べに日本海に行くなら、松川浦に3回行けると言われていました。12月末から3月いっぱいまでがズワイガニの漁期で、冬場はカニ、夏は海水浴と浜焼きが目当てで、福島市や仙台市からもわんさかお客さんが来て、このあたりは渋滞ができるくらいでした。父が経営している『ホテルみなとや』も、美味しいズワイガニを安く食べられるということで知られていて、自分もホテルの経営を手伝っていました。ここらの宿は、『お客様に来ていただいたら、たらふく美味しいものを食べていただく』という心意気でやっていました。」

松川浦観光の「売り」は、なんといっても海の幸の豊富さで、それには水産業の回復が大きなカギになっている。


筆:渡辺マサヲ

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