WALKER'S 東北復幸のいま 歩くことで伝えられるコト

被災地の今を知り、知らせる
風評被害や人々の顔・地域の姿を取材し、
レポートする

NEW

【第4回】磯部水産加工施設 〜「常磐もの」を再び!①

〜二つの災害〜

福島の人々にとって、あの東日本大震災は、あきらかに「二つの災害」として記憶されている。

ひとつは、地震・津波の「自然災害」。
もうひとつは、東京電力福島第一原子力発電所の事故という「人的災害」だ。
そのことは、ここに来る前から「知ってるつもり」だった。
けれど、ここに来て、しかも今の時期に来て、ようやく「理解できた」ように思う。

古来から自然の脅威との折り合いをつけてきた日本人にとっては、自然災害は、ある程度「仕方がない」ものとして容認されてきた。
けれど、これが人間が招いた災害であるならば、人の愚かさや軽率さについて「悔やまれるもの」があるわけで、その災害には全く関与していなかったと認識している人々にとっては、「巻き込まれた不運」であり、釈然としないものになってしまう。

しかもだ。
放射能のような目に見えないもの、そして、どこまでが危険でどこまでが安全なのか、「人によって捉え方が違うもの」であれば、なおさら複雑だ。科学的に安全でも、「先入観」や「疑念」を消し去るのには時間がかかるからだ。それは「風評」という、新たな災害なのかもしれない。
私たちはそのことを、今起こっている「コロナ禍」の状況で、まさに体験しているし、福島の方々が抱えていた10年間のご苦労と悔しさを、ようやく、少しでも「理解できる」立ち位置にたどり着いたといえるのではないだろうか。
これを乗り越えるためには、すでに我々も学び出しているように、感情的な状態をいったん冷まし、メディアの報道に翻弄されるのではなく、一人ひとりが、主体的に情報をとり、冷静に自分の頭で判断することが必要なのだ。

 

〜魚の宝庫、常磐沖〜

常磐沖から北上して、三陸沖、釧路沖、オホーツク海に至る北西太平洋海域は、寒流の親潮と暖流の黒潮がぶつかるところで、「世界三大漁場」に数えられている。
この地域は、正真正銘の「魚の宝庫」だ。

磯部水産加工施設は、相馬双葉漁協が経営する施設で、その直売所では、相馬・双葉地区の近海で獲れた水産物を、安価で販売している。
この地域の魚は、東京の市場では「常磐物(じょうばんもの)」と呼ばれる一目置かれる存在で、新鮮さと味の良さから、安定して高い評価を得てきた。

 


相馬双葉漁業協同組合の事業部長であり、この磯部水産加工施設の責任者でもある太田雄彦さんから、東日本大震災当時のこと、そしてこの地域の漁業の状況について、お話をうかがった。

 

 
   
    筆:渡辺マサヲ